株式投資における税金の基本と計算方法
近年の急激な物価高の上昇と、少子高齢化による年金制度に対しての不安感から、投資に興味を持ち始める人が急増しています。
投資のなかでももっともメジャーなのが株式投資であり、スムーズな運用ができれば定期預金とは比べ物にならないほどの利益を得られます。
特に株式投資初心者はつい忘れてしまいがちですが、投資による利益は所得扱いとなるため、一定額以上の利益を得た場合は税金を支払わなければなりません。
もし税金を支払っていないことが発覚した場合、意図的ではなかったとしても脱税扱いになり、通常の税金に上乗せして延滞税をしはらう事になってしまいます。
本記事では株式投資における税金の種類や計算方法について解説しているので、最後まで熟読し、忘れずに税金を支払うようにしましょう。
株式投資の利益にかかる税金の種類
株式投資の利益に応じて発生する税金は主に以下の4種類です。
- 譲渡益税
- 配当所得税
- 住民税
- 復興特別所得税
株式投資で利益を得る方法は大きく株式そのものを売却して利益を得るキャピタルゲインと、株式を保有し続けることで得られる配当金によるインカムゲインの2種類となっています。
4種類ある税金のうち、住民税と復興特別所得税はキャピタルゲインでもインカムゲインでも発生する税金です。
ちなみに株式投資による利益が年間20万円を下回る場合(給与所得2,000万円以下の人)、税金を支払う必要はありません。
所得が一切ない人は年間48万円以下ならば確定申告は不要です(基礎控除で所得が0円になるため)。
譲渡益税
譲渡益とは、株式を売却したときに得る利益で、株式投資の世界ではキャピタルゲインという専門用語で表されます。
キャピタルゲインは短期間で大きな利益が期待できる株式投資手法で、デイトレーダーと呼ばれる投資家は、1日に何度も株式を売り買いすることで利益を得ています。
2024年8月に入ってから日本株の乱高下が大きなニュースになりました。
8月6日に31,000円台だった日経平均株価は、翌日には35,000円にまで急騰しました。
つまり、この2日間に株を売り買いするだけで単純計算で4,000円の利益を得られるというわけです。
株式投資の利益にかかる税金の税率は国の方針によって変化しますが、2024年8月現在の税率は金額に関係なく20.315%となっています。
内訳は所得税15%・住民税5%・復興所得税が0.315%です。
配当所得税
配当所得税は、株式の配当金による利益に対して発生する税金です。
配当金はインカムゲインと呼ばれていて、株式を購入した企業が収益を得た際に、資金を融資してくれた株主に対する謝礼の意味で支払われます。
キャピタルゲインでの利益を狙った場合、大きな利益が期待できる一方で先程の日経平均株価の例に挙げた通り、短期間で急激に価値が変動する点がデメリットです。
その点、インカムゲインはキャピタルゲインと比べると大きな利益は得られないものの、安定して利益を確保できます。
配当金の税率も譲渡益税と同様に20.315%で、内訳も所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%でまったく同じです。
住民税
住民税はサラリーマンの人ならば毎月の給料から天引きされているので、所得税と同じくらい馴染み深い税金ではないでしょうか。
住民税は都道府県や市町村が行政サービスを維持するために支払われる税金です。
地方自治体は住民から集められた住民税によって教育や福祉といった、私達が暮らしていくのに必要不可欠な公共サービスを提供しているというわけです。
住民税は住んでいる地域によって金額に差があり、もっとも住民税が安い名古屋市と、もっとも高い豊岡市とでは、課税標準額が200万円だった場合、年間約1万円の差があります。
株式投資における住民税の税率は譲渡益でも配当益でも一律5%です。
復興特別所得税
復興特別所得税は、以前までは存在しなかった税金で、2011年の東日本大震災発生後発足されました。
東日本大震災によって東北地方は壊滅的な被害を受けました。
復興特別所得税は、東北地方の復興施策に必要な財源を確保するための税金で、所得税に上乗せされる形で支払いをします。
現状、徴収期間は2037年12月31日と定められているため、期間限定の税金です。
ちなみに復興特別所得税に関しては、被災地の復興目的以外の用途でも使われている事例が度々見受けられ、大きな問題となっています。
また、2037年までという期間をさらに20年延長する代わりに税率を1%下げるという案も出ているため、今後の動向には注目しておきたいところです。
復興特別所得税の税率は、所得税の2.1%となっています。
株式投資に税金がかかるタイミング
株式投資で税金が発生するのは、株式投資によって利益を得たときですが、具体的にはどのタイミングで税金が発生するのでしょうか。
株式の売却時
株式投資で税金がかかる、つまり所得を得るタイミングとは、株式を買い値よりも高い値段で売却したときです。
株式を売却した際に発生する税金は譲渡益税で、先の項目で解説した通り、譲渡益に対して20.315%の税金を支払う必要があります。
譲渡益の計算は、株式を売却したときの価格から購入した時の価格(取得費用)を差し引き、更に株式を売却したときの手数料(譲渡費用)を差し引いて残った金額です。
配当金の受け取り時
株式投資で利益が出るもうひとつのタイミングは、保有している株式の配当金が出たときです。
配当金に対して発生する税金は配当所得税で、税率は譲渡益税と同じく20.315%となります。
配当金は企業が利益が出た際にお金を融資してくれた株主に対して支払うものであり、企業の経営状態によっては配当金が上下したり、場合によっては1円も支払われなかったりします。
配当金税の計算は、単純に支払われた配当金の金額に税率20.315%を掛け算するだけです。
ちなみに配当金に関しては、基本的にサラリーマンの給料と同様に支払いの際に源泉徴収が先に実施されます。
つまり、先に配当金税が差し引かれた状態で配当金を受け取ることになるというわけです。
したがって、株式の利益が配当金のみの場合、基本的に確定申告をして税金を支払う必要はありません。
株式投資の税金に関する申告方法
株式投資を実施するための口座は大きく特定口座と一般口座に分かれています。特定口座はさらに源泉徴収が自動的にされるものとそうでないものに分かれていて、それぞれ税金の申告方法が異なります。
特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合
特定口座は株式や投資信託などの投資商品の損益を、金融機関が計算し、年間取引報告書を作成してくれます。
特定口座でさらに源泉徴収がなされる場合は、投資による収益すべてに源泉徴収が適用されるため、追加で確定申告して税金を支払う必要はありません。
税金を申告する手間が省けるため、源泉徴収ありの特定口座は株式投資初心者が証券口座を開くのに適しています。
ただし、源泉徴収ありの特定口座で購入した株式による利益は、入金されると同時に源泉徴収されるため、年間の利益が20万円以下でも税率が差し引かれる点には注意が必要です。
特定口座(源泉徴収なし)を利用している場合
株式投資の口座が特定口座で、なおかつ源泉徴収をしない場合、株式投資によって得た利益が年間20万円を超えていれば確定申告をして税金を支払わなければなりません。
ただし、口座内の損益に関しては金融機関が計算し、年間取引報告書を発行してくれます。
確定申告の際は年間取引報告書に記載されている内容をもとに、譲渡益や配当金益を計算して支払うべき税金を計算しましょう。
源泉徴収しないため、税金の申告をしなければなりませんが、株式投資による年間利益が20万円以下の場合は税金の支払いは必要ありません。
株式投資初心者は源泉徴収ありの特定口座がよいとおすすめしましたが、少額投資での株式投資を検討している人は、源泉徴収なしの特定口座のほうがよいでしょう。
一般口座を利用している場合
一般口座で株式投資をしている人は、金融機関からの年間取引報告書が発行されません。
したがって、株式投資による損益を計算し、支払うべき税金を算出するには1年間の取引に関する記録も残しておく必要があります。
年間取引報告書が作成される特定口座と具rべると、確定申告をする際に非常に手間がかかることは否定できません。
したがって、株式投資の初心者は一般口座を用いての取り引きはやめておいたほうがよいでしょう。
ただし、年間の利益が20万円以下になることが確実な場合は、一般口座で株式投資をおこなっても特に問題ありません。
税金の申告だけを見ると、一般口座にはデメリットしかないように思えますが、実は一般口座では上場していない未公開株を管理できるというメリットがあります。
株式投資の経験を十分積み、将来大きく成長すると確信を持てる未公開株を見つけたならば、一般口座の開設を検討しましょう。
株式投資の税金計算方法
源泉徴収なしの特定口座と一般口座で株式投資をして20万円以上の利益が出た場合は確定申告して税金を支払わなければなりませんが、税金の計算方法がわからなければ正しい金額を算出できません。
譲渡益税と配当金益の税金計算方法は必ずマスターしておくようにしましょう。
株式譲渡益税の計算方法
株式譲渡税の解説でも触れましたが、譲渡税の計算方法は、株式を売却したときに得た金額から、その株式を購入したときの費用を差し引き、さらに取引のときに発生する譲渡費用(手数料)を差し引いた額となります。
例えば200万円で購入した銘柄が250万円になったときに売却し、売却の際の譲渡費用が5,000円かかったとします。
このときの譲渡益は、250万-200万-5,000で、45万5,000円となります。
譲渡益税はこの45万5,000円に対して発生します。
利益を得た場合の計算は上記のとおりで問題ありませんが、譲渡価格が購入価格を下回ってしまった場合はどうなるのでしょうか。
さきほどの例を引用し、200万円で購入した銘柄がはh分の100万円まで暴落、損切りするためにその価格で売却したとしましょう。
譲渡益を計算すると、100万-200万-5,000で、計算結果はマイナス100万5,000円です。
損失が出ているため、当然税金を支払う必要はありません。
さらに株式投資では損益通算という制度があって、損益が出た場合、別の株式で得た利益と相殺できます。
例えばAという銘柄で200万円の利益を出した一方で、Bという銘柄では150万円の損失が出てしまったとします。
通常ならAの銘柄では200万円の利益に対する税金を支払わなければなりませんが、損益通算によって200万円の利益から150万円の損益を差し引くことができるため、最終的な利益は50万円です。
したがって、50万円分の税金を支払うだけで済みます。
もうひとつ、株式投資には繰越控除という制度もあり、大きな損失を被った場合、3年間損失金額を繰り越すことができます。
配当金にかかる税金の計算
企業がお金を融資してくれた株主に対しての謝礼として支払われるのが配当金です。
配当金にかかる税金の計算は、単純に支払われた配当金の合計額をもとに配当金の税率である20.315%を掛け算することで求められます。
配当金は基本的に申告不要制度が適用されており、株主に配当金が支払われる前に源泉徴収が実施されているため、確定申告を実施する必要はありません。
ただし、総合課税制度・申告分離課税制度という手法で配当金を受け取っている場合は確定申告が必要となります。
株式投資における利益が20万円以下の場合に申告不要制度を利用すると不要な税金を支払うことになるので、確定申告をして支払った税金を控除してもらうようにしましょう。
また、申告不要制度を利用していて損益が出た場合も確定申告をして損益通算する必要があります。
税率と控除の仕組み
株式投資で利益を得た場合の税率は一律20.315%となっていますが、この税率が一定額に限り免除される制度があります。
それが現在話題となっている新NISAです。
新NISAは株式投資の手法と勘違いしている人も多いですが、そうではなく、正しくは税金が免除される制度を指しています。
新NISA口座を開設して株式や投資信託を購入すれば、保有額1,800万円までならば税金は一切かかりません。
これから株式投資を始めようという人がいきなり数千万円の投資をすることはリスクが大きすぎます。
どれだけ資産があっても、まずは失っても問題ない金額でスタートするほうがよいでしょう。
新NISA口座で株式投資を始めれば、しばらくの間は税金を一切気にする必要はありません。
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株式投資で一定以上の利益を得ると税金を支払わなければなりません。
特に株式投資を始めたばかりの人は、株で利益を得るための方法ばかりに意識が集中してしまい、税金のことまで頭が回らないことが多いです。
しかし、税金を支払わないことは脱税にあたり、法律違反になるので、株式投資でまとまった利益を得た場合は必ず申告して税金を支払うようにしましょう。
株式投資初心者は特定口座(源泉徴収あり)で株式を購入することをおすすめします。
特定口座(源泉徴収あり)は利益に対して自動的に源泉徴収がおこなわれるため、確定申告をして税金を支払う手間を省けます。
株式投資の税金に関しては、本記事を熟読すれば基本的なことは理解できるでしょう。
しかし、株式投資の税金に関しての本格的な知識を得るためには、コラムだけでは不十分です。
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